親が亡くなった直後、深い悲しみの中で「どこから手をつければいいのか分からない」と不安を抱える方は大変多くいます。特に、相続手続きは期限があるものも多く、後回しにするとトラブルに発展することもあります。
この記事では、相続が初めての方でも迷わず進められるように、亡くなったその日から相続税の申告期限である10カ月までに必要な手続きをやさしく・丁寧に・かつ実務レベルで分かりやすくまとめました。
また、経営者・資産家の家庭での注意点も追加し、一般家庭+経営者層の両方に対応した「完全保存版」です。
親が亡くなった直後に必要な相続手続きの全体像
まずは、相続手続きを「いつまでにやるべきか」という軸で整理すると、全体像が一気に理解しやすくなります。
相続手続きは「期限あり」と「期限なし」に分かれる
- 期限ありの手続き(遅れると不利益が生じる)
- 死亡届:7日以内
- 年金の手続き:10〜14日以内
- 健康保険・介護保険の届出:速やかに
- 相続放棄・限定承認:3カ月以内
- 相続税の申告・納税:10カ月以内
- 期限なし(なるべく早くやるべき)
- 銀行口座の凍結解除
- 不動産の相続登記(2024年義務化)
- 遺産分割協議
- 名義変更(自動車・証券等)
- 公共料金やクレカの解約
相続発生からの流れ(タイムライン)
亡くなった日
↓
【7日以内】死亡届の提出
↓
【2週間以内】健康保険・年金・介護保険などの届出
↓
【1〜2カ月】相続人の確定・遺産の調査
↓
【3カ月以内】相続放棄・限定承認の判断
↓
【3〜6カ月】遺産分割協議・協議書作成
↓
【10カ月以内】相続税の申告・納税
↓
【以降】名義変更の最終確認・将来相続の準備
① 死亡届の提出|最初に必要な手続き(7日以内)
親が亡くなったら、まず最初に行うべき手続きが死亡届の提出です。これは相続手続きのスタートラインであり、ここを済ませることで火葬や葬儀が正式に進められるようになります。
死亡届とは?
死亡届とは「亡くなった事実」を市区町村へ届けるための書類です。病院で亡くなった場合、医師が作成する死亡診断書と一体になっていることが一般的です。
提出期限と提出先
・提出期限:死亡日を含めて7日以内
・提出先:亡くなった場所/本籍地/届出人の住所地の役所
必要書類
- 死亡届(死亡診断書付き)
- 届出人の本人確認書類
- 印鑑(自治体による)
経営者の場合の注意点
- 社員・取引先への連絡
- 会社印・代表者印の管理
- 事業継続に必要な契約の確認
② 葬儀・火葬の手配|葬儀費用は相続税で控除できる
葬儀は精神的にも大きな負担ですが、実は葬儀費用は相続税で控除できます。領収書はすべて保管しておきましょう。
葬儀の流れ
- 葬儀社への連絡
- 安置場所の調整
- 葬儀日程の決定
- 通夜・告別式
- 火葬
- 初七日など
相続税で控除できる費用
- 葬儀社の費用
- お布施
- 火葬料
- 遺体の搬送費
- 斎場の使用料
控除できない費用
経営者の葬儀で追加される配慮
- 社葬・合同葬の検討
- 取引先・関係者への弔電対応
- 会社費用と個人費用の切り分け
③ 役所での手続き|年金・健康保険・介護保険の届出
葬儀が終わったら、役所での届出を行います。
年金受給停止の手続き
年金受給者が亡くなると、受給停止の手続きが必要です。死亡後に入金された年金は返還対象になります。
健康保険の資格喪失届
- 社会保険:会社が手続き
- 国民健康保険:市区町村で手続き
介護保険の返還手続き
過払い分の返金がある場合があります。ケアマネージャーにも連絡しましょう。
放置すると損するケース
- 年金の誤入金による返還手続き
- 保険料の無駄な支払い
- 介護保険サービスの誤請求
④ 相続人の確定|戸籍収集で「誰が相続人か」を明確にする
相続手続きで最も重要なのが、相続人の確定です。1人でも漏れるとすべての手続きが無効になる可能性があります。
必要な戸籍
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
- 相続人全員の現在戸籍
相続関係説明図(家系図)の作成
銀行や法務局への提出が必要です。書式は自由です。
注意が必要なケース
- 再婚している
- 認知した子どもがいる
- 養子縁組がある
経営者の場合の追加事項
- 自社株の相続人
- 代表権の継承
- 会社の決算・株主構成への影響
⑤ 財産(遺産)の調査|預金・不動産・株式・保険・負債まで一覧化
財産調査は遺産分割協議の前提となる最重要の工程です。
プラスの財産
- 現金・預金
- 株式・投資信託
- 不動産
- 自社株
- 生命保険金
- 自動車・貴金属など
マイナスの財産
不動産の調べ方
経営者の場合:自社株評価が重要
自社株は相続財産の中でも評価が複雑で、専門家の計算が必須です。
⑥ 銀行口座の凍結解除手続き|必要書類と流れ
銀行口座は、亡くなった時点で原則凍結されます。解除には相続人全員の同意が必要です。
必要書類
- 被相続人の戸籍一式
- 相続人全員の戸籍
- 遺産分割協議書
- 印鑑証明書
- 相続関係説明図
銀行ごとの違い
- ゆうちょ銀行は手続きが多い
- 三菱UFJ銀行は統一依頼書が必要な場合あり
- ネット銀行は郵送対応が中心
経営者の場合の屋号口座
個人事業主の屋号口座は、経費と個人資産が混在し、相続財産扱いになるかがケースにより異なります。
⑦ 不動産の相続登記|2024年義務化された名義変更手続き
2024年から相続登記が義務化され、登記を放置すると過料(罰金)の対象になります。
必要書類
- 戸籍・住民票
- 遺産分割協議書
- 登記原因証明情報
- 固定資産評価証明書
費用
共有名義が危険な理由
- 売却が困難になる
- 相続が続くと人数が増えすぎる
- 管理ができなくなる
⑧ 相続放棄・限定承認の判断|借金が多い場合の重要手続き
相続放棄が必要なケース
3カ月以内に判断が必要
放置すると「相続した」とみなされます。
限定承認との違い
- 相続放棄:財産を一切受け取らない
- 限定承認:プラスがあれば受け取る(手続きは複雑)
経営者の注意点
保証債務が絡む場合は判断が非常に難しく、司法書士や弁護士への相談が必須です。
⑨ 遺産分割協議と協議書の作成|家族間トラブルを避ける
協議で決める内容
- 遺産を誰がどれだけ受け取るか
- 不動産の扱い
- 生命保険の扱い
- 会社株の承継
協議書の書き方
- 相続人全員の署名・押印
- 実印+印鑑証明書
- 財産内容を明確に記載
典型的に揉める例
- 介護した子の取り分に不満
- 兄弟間の不公平感
- 再婚家庭での相続問題
⑩ 相続税の申告と納税|10カ月以内に必ず行う
相続税がかかるかどうかは基礎控除で決まります。
基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
必要書類
- 相続税申告書
- 財産評価資料
- 生命保険の支払調書
- 葬儀費用の領収書
納税資金が足りない場合の対策
その他 必要に応じて発生する手続き
- 生命保険の請求
- 公共料金・クレカ・サブスクの解約
- 自動車の名義変更
- 法人代表者変更(経営者の場合)
手続きが終わった後にやっておくべき3つのこと
① 名義変更の最終チェック
銀行・不動産・証券など、漏れなく確認しましょう。
② 将来の相続に備える
③ 家族会議を開催する
今後の相続トラブルを防ぐためにも明確な話し合いが効果的です。
まとめ|優先すべき手続きを理解し、1つずつ進めれば大丈夫です
相続手続きは複雑に感じますが、優先順位を押さえれば難しいものではありません。
まずは相続人の確定・財産調査・期限のある手続き(3カ月・10カ月)を早めに行うことが大切です。
不安がある場合は税理士・司法書士・行政書士など専門家に相談することも検討してみてください。
次に読むべきおすすめ記事
- 死亡届提出後にやることまとめ
- 相続放棄の3カ月ルール
- 不動産の相続登記 完全ガイド
- 銀行口座の凍結解除の進め方