遺言書の書き方|自筆証書遺言と公正証書遺言どちらが良い?違いと選び方をやさしく解説

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「遺言書を書いたほうがいいと言われたけど、何から始めればいいのか分からない…」
「自筆の遺言と、公正証書遺言って何が違うの?」

将来の相続トラブルを防ぐうえで、遺言書はとても強力なツールです。ただし、書き方や形式を間違えると、せっかく書いた遺言が無効になってしまうこともあります。

この記事では、相続や遺言が初めての方に向けて、

  • 遺言書の基本と役割
  • 自筆証書遺言公正証書遺言の違い
  • それぞれのメリット・デメリット
  • どんな人にどちらがおすすめか
  • 実際の書き方・作り方の流れ

を、やさしく丁寧に解説します。


1.そもそも遺言書を書くと何が変わるのか?

まず、「なぜ遺言書が必要なのか」を整理しておきましょう。

1-1.遺言がないと「法定相続分」が基本になる

遺言書がない場合、基本的には法律で決められた「法定相続分」に従って財産を分けます。

  • 配偶者+子どもがいる場合:配偶者1/2、子ども全員で1/2
  • 子どもがいない場合:配偶者2/3、親1/3 など

「法律通りで問題ない」と思えるご家庭もある一方で、

  • 介護をしてくれた子に多めに渡したい
  • 事業を継ぐ長男に会社の株や不動産を集中させたい
  • 再婚家庭で、前妻の子・今の配偶者・子どもがいる

といった場合、法定相続分のままだと不都合が出ることも多いです。

1-2.遺言があると「自分の意思で」財産の行き先を決められる

遺言書があると、

  • 誰に(相続人・孫・配偶者・内縁の妻など)
  • 何を(自宅・預金・株式など)
  • どれくらい渡すか

を、自分の意思で指定することができます。

さらに、

  • 「長男には会社を継いでほしい」
  • 「次男には現金を多めに渡したい」
  • 「介護をしてくれた娘に自宅を残したい」

といった思いをメッセージとして残すことで、家族の納得感もぐっと高まり、トラブルを防ぎやすくなります。


2.遺言書の主な種類は3つ(ここでは2つに絞って解説)

民法上、遺言の方式はいくつかありますが、一般的なものは次の3つです。

  • 自筆証書遺言(自分で書く遺言)
  • 公正証書遺言(公証役場で作る遺言)
  • 秘密証書遺言(利用は少ないので本記事では割愛)

実務上、「ほぼこの2つ(自筆証書遺言と公正証書遺言)」と考えて問題ありません。


3.自筆証書遺言とは?特徴とメリット・デメリット

まずは、多くの方がイメージする「自分で紙に書く遺言」です。

3-1.自筆証書遺言の基本ルール

自筆証書遺言には、次のようなルールがあります(概要)。

  • 本文はすべて自筆で書く(パソコン不可)
  • 日付・氏名を自筆で書き、押印する
  • 財産目録については、パソコンやコピーでもOK(自筆不要に緩和された)

形式を満たしていないと無効になってしまう可能性があるため、注意が必要です。

3-2.自筆証書遺言のメリット

  • 費用がほとんどかからない(用紙代・筆記具代のみ)
  • 自宅で自分のペースで書ける
  • 内容を他人に知られずに作れる
  • 思い立ったときにすぐ書き始められる

「まずは手軽に始めてみたい」という方には、心理的ハードルが低い方法です。

3-3.自筆証書遺言のデメリット

  • 形式ミスにより無効になるリスクがある
  • 保管方法によっては、紛失・改ざん・隠匿のおそれがある
  • 家庭裁判所で検認手続きが必要になる
  • 専門家のチェックが入らないと、法律的に不完全な内容になりやすい

特に、「自分では正しく書いたつもりでも、法律的には不備があった」というケースは珍しくありません。

3-4.法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を使うと安心度が上がる

近年は、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」も始まりました。

  • 法務局に原本を預けられる
  • 紛失・改ざんのリスクを下げられる
  • 家庭裁判所の検認が不要になる

完全にノーリスクになるわけではありませんが、自宅保管よりも格段に安全性が高まります。


4.公正証書遺言とは?特徴とメリット・デメリット

次に、公証役場で作る「公正証書遺言」です。実務的には最もおすすめされやすい形式です。

4-1.公正証書遺言の基本

公正証書遺言は、

  • 公証人(法律の専門家)が内容を聞き取りながら文書を作成する
  • 遺言者が内容を確認して署名・押印する
  • 原本は公証役場で保管される

という流れで作成されます。

4-2.公正証書遺言のメリット

  • 法律の専門家(公証人)が関与するため形式ミスの心配がほぼない
  • 原本が公証役場に保管され、紛失・改ざんのリスクが低い
  • 家庭裁判所の検認が不要で、手続きがスムーズ
  • 将来「遺言の有効性」をめぐって争われにくい

特に、財産が多い・不動産が複数ある・事業承継が絡む・家族関係が複雑といった場合は、ほぼ公正証書遺言一択と言って良いレベルです。

4-3.公正証書遺言のデメリット

  • 費用(手数料)がかかる
  • 公証役場に出向く必要がある(在宅での出張対応もあるが追加費用)
  • 証人2名が必要(兼ねてはいけない人の条件もある)
  • 完全に「誰にも知られずに作りたい」という要望とは相性が悪い

費用は財産額・内容によって変わりますが、
「数万円〜十数万円程度」が目安です(ケースにより変動)。


5.自筆証書遺言 vs 公正証書遺言の比較一覧

2つの方式を分かりやすく比較すると、次のようなイメージです。

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 自分で紙に書く 公証人に作成してもらう
費用 ほぼゼロ(紙・ペン代など) 公証人手数料が必要
形式ミスのリスク 比較的高い かなり低い
紛失・改ざんリスク 自宅保管だと高い/法務局保管で軽減 原本は公証役場で保管
家庭裁判所の検認 原則必要(法務局保管の場合は不要) 不要
手軽さ その場で書ける 予約・面談が必要
家族間のトラブル防止能力 内容次第では争いの種になることも 証拠力が高く、争いになりにくい

6.どんな人にどちらがおすすめ?ケース別の選び方

では、実際に「どんな人がどちらを選ぶべきか」をケース別に見ていきましょう。

6-1.自筆証書遺言がおすすめの人

  • まずは「遺言を書く」という行為を始めてみたい人
  • 財産がそこまで多くなく、相続人もシンプルな家庭
  • 費用をほとんどかけずに遺言を残したい人
  • 自宅でゆっくり自分の言葉でまとめたい人

ただし、その場合でも法務局の保管制度を併用することで、
紛失・改ざんリスクをできるだけ減らしておくことをおすすめします。

6-2.公正証書遺言が強くおすすめな人

  • 不動産が複数ある
  • 事業(会社)をしている/自社株を持っている
  • 相続人が多い、家族関係が少し複雑
  • 再婚家庭・前妻の子ども・内縁の配偶者などがいる
  • 相続税がかかる可能性が高い

こういった場合には、ほぼ「公正証書遺言一択」と考えてよいレベルです。


7.自筆証書遺言の書き方の基本ステップ

ここからは、より具体的に「どう書けばいいのか」の流れを簡単に整理します。

7-1.ステップ①:誰に何を渡したいかを書き出す

  • 自宅の不動産を誰に残すか
  • 預金・株式をどのように分けるか
  • 特に感謝している家族・親族・知人に渡したいものがあるか

まずはメモ段階でもいいので、自分の考えを整理します。

7-2.ステップ②:本文を「自筆」で書く

自筆証書遺言では、本文をすべて自筆で書く必要があります。

例:

第1条 私の全財産のうち、〇〇銀行△△支店の普通預金(口座番号××××××)
   のうち、300万円を長女 〇〇〇〇(昭和×年×月×日生)に相続させる。

第2条 私名義の自宅不動産(所在:〇〇市〇〇町…)を、長男 〇〇〇〇に相続させる。

(以下略)

7-3.ステップ③:日付・氏名・押印を忘れずに

  • 作成した日付を書く(西暦・和暦どちらでもOKですが特定できること)
  • 自分の氏名を自筆で書く
  • 押印(認印でも有効とされるが、実務上は実印が望ましい)

7-4.ステップ④:財産目録を別紙で作る場合

最近のルールでは、財産目録はパソコンやコピーでもOKになりました。

  • 別紙に不動産・預金・株式などを一覧にする
  • 各ページに署名・押印

本文と財産目録をセットで「遺言書」として扱います。

7-5.ステップ⑤:保管方法を検討する

  • 自宅の金庫などに保管する場合:火事・紛失・改ざんリスクあり
  • 法務局の保管制度を利用する:安全性と確実性が高まる

8.公正証書遺言を作成する流れ

8-1.ステップ①:事前に財産と家族関係を整理する

  • 不動産の権利証(登記簿謄本)
  • 預金・証券の残高
  • 家族構成(戸籍)

事前に整理しておくと、公証人との打ち合わせがスムーズです。

8-2.ステップ②:公証役場または専門家に相談する

  • 直接、公証役場に相談する
  • 税理士・司法書士・弁護士などの専門家に間に入ってもらう

「こんな内容の遺言にしたい」という希望を伝え、草案を作ってもらう流れです。

8-3.ステップ③:公証役場で作成・署名・押印

  • 本人が公証役場に出向き、内容を読み上げてもらう
  • 内容を確認し、署名・押印する
  • 公証人と証人が署名・押印

これで正式に「公正証書遺言」が完成します。

8-4.費用のイメージ

公正証書遺言の手数料は、財産の額や構成によって変わりますが、目安としては

  • 数万円〜十数万円程度

と考えておくと良いでしょう(正確な金額は公証役場や専門家に確認が必要)。


9.よくある失敗パターンと注意点

9-1.日付が特定できない

「令和〇年〇月吉日」のような表現は、日付が特定できないとして無効理由になるおそれがあります。
必ず「令和〇年〇月〇日」と具体的に書きましょう。

9-2.誰に何を渡すかがあいまい

「長男に多めに渡す」「家族で話し合って決めてほしい」など、具体的でない表現は、かえって争いの原因になります。

・財産の特定(どの口座/どの不動産か)
・誰に渡すのか(名前・生年月日など)

をできるだけ明確に書きましょう。

9-3.遺留分への配慮が一切ない

一定の相続人には、「遺留分」といって最低限の取り分が保障されています。

  • 配偶者
  • 子ども
  • 直系尊属(子どもがいない場合の親など)

これらの人の遺留分を完全に無視した内容にすると、
「遺留分侵害額請求」を受け、結局トラブルになってしまうことがあります。


10.まとめ|「手軽さの自筆」か「安心の公正証書」か

遺言書は、将来の家族の負担を軽くするための、とても大切な準備です。

  • 自筆証書遺言:手軽・低コストだが、形式ミスや保管リスクに注意
  • 公正証書遺言:費用はかかるが、もっとも安全でトラブルになりにくい

ざっくりとした目安としては、

  • 財産がそこまで多くない/相続関係がシンプル → 自筆証書遺言+法務局保管も検討
  • 不動産・会社・複数の相続人・再婚など複雑な事情 → 公正証書遺言が強くおすすめ

「完璧な遺言書」をいきなり目指さなくても構いません。
まずは、自分の頭の中にある「誰に何を残したいのか」という気持ちを、紙に書き出してみるところから始めてみてください。

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